電気か灯油か
暖房の熱源は電気がいいのか,灯油(石油)がいいのか,最近のランニングコストの動向も踏まえて考えてみたいと思います.
北海道の電気料金は去年9月の値上げに引き続き,最近のニュースではさらなる値上げがあるのではとされています.現状,オール電化住宅の暖房用電気料金は灯油などと比べどうなっているのでしょうか.分析してみます.
試算するモデルは前回と同じで,この住宅を深夜電力利用の蓄熱式で暖房した場合を考えてみます.
暖房システム効率については後でも述べますが,ここでは灯油ボイラーと同じとして,年間の暖房用エネルギー消費量は14,663[KWh]とします.現在の深夜電力料金は10.14[円/KWh]ですから,単純にかけ算をして,年間で148,700円ほどです.
灯油の必要量は1,527[L]でしたから,灯油の価格を105[円/L]とするとこちらはおよそ160,300円.だいぶ差が縮まってきましたが,まだ深夜電力の方が安そうです.ここで気をつけなければならないのは,2013年10月以前に使用開始していた場合と,それ以後の場合はマイコン制御の機器を使っている場合の割引の有無が違うということです.
料金割引が適用の場合,この規模の住宅のヒーター容量は26[kW]くらいとして,現在の割引単価は105[円/kW]なので,年間に
26[kW] × 105[円] × 12[ヶ月] = 32,760[円]の割引がありますので,トータルで
148,700 - 32,760 = 115,940[円]となり,これははっきり灯油より優位そうです.
残念ながら2013年10月以降に新規契約された方はこの割引が適用されません.そのこともあって,新規にオール電化を採用する住宅は料金改正を機にぱったり少なくなったと聞きました.
これまで深夜電力での暖房をしていた住宅では去年の値上げでどれほど影響が出たか,試算してみます.
深夜電力の単価はそれまでの8.37[円/kWh]から10.14[円/kWh]に値上がりし,マイコン制御の割引単価は147[円/kW]から105[円/kW]に引き下げられたので,上記住宅の消費電力で計算すると,去年までの料金だと年間77,000円ほどの計算になります.一挙に4万円近い値上がりで,これにさらに電気温水器や一般電灯の電気代の値上がり分も積み上がってきますから,オール電化の家は相当な値上がり感を感じていると思います.
深夜電力の蓄熱式暖房の場合のシステム効率ですが,手元にある6年ほど前の電力会社の資料を見ると,蓄熱式100に対して灯油ボイラーは82%という数字があり,電力のほうが優れているかのようですが,そのまま鵜呑みにするわけにはいかないと思います.というのも両者には使い勝手上の大きな違いがあるからです.
蓄熱式は安価な深夜電力を使って蓄熱体に熱をため込み,その他の時間徐々にその熱を放熱するという方法ですので,微調整が効きません.これまで往々見られたように天気のいい日は室温が暑くなりすぎて窓を開けて熱を逃がすなどということもあり,無駄が生じていた側面もあると思います.その点,ボイラーはその時の状況に応じてリアルタイムで暖房負荷を調整できるので,そうした無駄が少ないといえます.
もっとも機器の長期的な寿命といった側面では電気のほうが優れています.電気のヒーターは寿命は半永久的ですし,長く使っていても効率は落ちないし,メンテナンスも不要です.一方,灯油のボイラーはバーナーで燃焼させるので,煤がついてくると効率が落ちてきますし,定期的な分解掃除などのメンテナンスも必要です.最終的な耐用年数も15年ほどでしょうか.
このように電気と灯油ではそれぞれ一長一短あるわけですが,これまではメンテナンスのしやすさとランニングコストの安さで電気が優位で,オール電化住宅の大幅な普及につながってきました.しかしここに来て前述のようにその優位性は揺らいでいます.
今後の灯油価格と電気料金の推移に注目しています.