しな合板
かつて建築雑誌でローコスト住宅として紹介されるのにしばしば登場していた素材がしな合板(しなベニヤ)です.確かにしな合板は木目がおとなしく全体に白っぽいので,シンプルで質素な感じがします.私もそのスマートさが好きでこれまで幾度となく設計に取り入れてきました.ただしそれがローコストにつながるかどうかというとちょっと疑問です.しな合板そのものは確かにあまり高い材料ではありませんが,それをきれいに張ろうと思うと大工さんの技量も必要ですし,なにより手間がかかるからです.ローコストの住宅をつくろうと思うと,材料に安いものを使うだけではなく,つくる手間もかからないようにしなければなりません.画像はしな合板をを3尺(900㎜)角にして目透かし張りにした例です.合板をぴったり突きつけるのではなく少し間を開けて張る方法です.
一般には石膏ボードを下張りにしてその上に接着剤でしな合板を張り付けます.接着剤を使うことで釘を表面に見せないで仕上げることができます.また目地底にはしな合板と同じような色のテープを貼るとよりきれいに見えます.今やそんなことをちゃんとできる大工さんがどれだけいるのか,疑問ですが・・・.
しな合板は着色しないでクリア塗装にするか素地仕上げが多いようですが,最初の画像の家ではオイルステインで少し着色しました.2枚目の画像の家では突きつけ張りですが,やはり着色しています.しな合板の着色塗装はなかなか難しく,腕のいい職人さんでないとあまりきれいに仕上がりません.工場で吹き付けのウレタン塗装ならわりあいきれいに仕上がりますが,現場での施工ではムラが目立ちきれいにいきません.このふたつの現場では塗装屋さんの技術が高くきれいに仕上がりました.
最後の画像は階段のある玄関ホールで,ここでは塗装無しの素地仕上げです.
ハウスメーカーのモデルハウスや建売住宅を見に行くと,内壁の仕上げは石膏ボード下地ににビニールクロスを張ったものがほとんどです.結局それがいちばん手間がかからずコストも安くきれいに見えるからなのだと思います.ただ,そればかりだと個性が無くつまらないような気がします.そんなわけで,できるだけビニールクロス一辺倒ではなく,しな合板やその他の合板など,設計に取り入れるようにしています.手間のかかる仕上げを面倒がらず丁寧に,しかもできるだけローコストで施工してくれる施工者を見つけることも,設計者の仕事のひとつだと考えています.作り手の技が見える味わいのある住まいをつくりたいと思います.