高齢者の住まい
月曜塾の仲間であるT設計のIさんからご自身が現場を担当した特別養護老人ホーム「さくらの里」の完成内覧会の案内があったので見学に行ってきました.いわゆる「新型特別養護老人ホーム(新型特養)」といわれる施設です.
その特徴は全室個室でそれが10部屋がひとまとまりになっていて食堂等を共有する,ユニットケアという小規模な生活単位で構成されていることです.それまでの「新型」ではない特別養護老人ホームは,2人部屋・3人部屋といった多床室で,さらに大食堂が一ヶ所というのが主流でした.ユニットケアという方式は認知症の人が対象のグループホームで一般的なので,ご存じの方も多いとおもいます.
見学にいって最初に驚いたのはその規模の大きさでした.あとで調べてみると「新型特養」の基準は定員50人以上,つまり1ユニット10人が5つ以上という規定があるのでそれなりの大きさになります.「さくらの里」ではさらにショートステイのユニットがひとつあるので合計60人の定員です.また,個室も10帖ほどの広さがあり,とても余裕を感じました.というのも,いわゆる一般的なグループホームの個室はぎりぎり6帖大のところがほとんどなので,それに比べるととても広く感じます.特養に入る人はほとんどが車椅子での生活か寝たきりの状態といった介護の必要性の高い人が優先されるのにたいして,グループホームにいる人は認知症とはいえ身体の運動能力は活発で,認知症の程度もさまざまですから,小さな部屋にいるのがお気の毒に感じることがあります.
「さくらの里」ではお風呂の設備が目を引きました.高齢者の介護のうち,介護する立場からして重労働のひとつなのが入浴の介護でしょう.でも,お風呂に入って心身共にさっぱりしたいという思いは,誰もが思うとても大切なことだと思います.介護する人が楽に作業できて入所者だけでなくショートステイの人も不便なく入浴できる設備が整っているのは,これからの高齢者福祉施設にはとても重要だと思います.
人は必ず老いていきます.住まいの設計に携わる者として,加齢にともなう身体能力の変化にどう対応するか,介護が必要になったときにどうするかといったことはいつも考えています.難しいのはこうしておけば大丈夫という一般解が無く,その人その家にあった方策を考えなければいけないことです.高齢者に対応した住まいについては,自分自身のことも含めさらに研鑽を続けていかなければと考えています.