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地材地消

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住宅を主にあつかった建築雑誌をみていると,日本各地で地元の山の木を使った住宅建設の取り組みがあることがわかります.本州の多くの地方では杉,北海道ではカラ松です.私が所属する北海道木質構造開発協議会も地場産カラ松の有効利用についての取り組みをしています.以前に埼玉で同様の活動をしている「埼玉住まいの会」の方々を訪ねたことがあります.そこでは西川材といわれる地元埼玉の杉を使った住宅に取り組んでいました.設計者の有志グループが木材供給者や工務店と連携して,地場産木材を使った住まいづくりに取り組んでいます.北海道でこうした取り組みを表現することばに「地材地消」というのがあります.地元の木を地元で消費しようという意味です.元々は「地産地消」という木材に限らず農作物などについてのことばから派生しています.いわゆるスローフード運動と同義といっていいと思います.
地元,言い換えれば国産の木材を使うことがなぜ重要なのか,それには地球温暖化を防ぐための環境問題,それと地元の林業を支えようという経済的な側面があります.

今日はその環境面での意味について考えたいと思います.おそらく木を切ることは自然環境を破壊することで悪いことだと思っている方も多いと思います.これについてはいくつか誤解があります.木は光合成により二酸化炭素を吸収し酸素を放出しますが,同時に木も生物ですから酸素を消費し二酸化炭素を放出します.ただ若い成長期では光合成による酸素の放出量のほうが多いのですが,ある時期を過ぎると成長が止まり酸素を消費して二酸化炭素を放出する方が多くなるのです.ですから大気中の二酸化炭素を減らそうと思うと,ある程度育った木は伐採して建築資材などに使い,また新たに木を育てることが必要になります.植林した木をほったらかしにしておくと老齢化した木は酸素を消費するようになってしまうからです.このように植林して育ててはその木を転用することを「二酸化炭素の固定化」といった言い方をします.もちろん地球遺産ともなっている白神山地のブナの原生林のように,手つかずのままの自然として守らなければならない森林もありますが,日本の多くの森林は人間の手が加わった人工林なのです.また,インドネシアのように無計画・無秩序に森林が伐採され,植林が進まないことにより環境が破壊されている例も確かにありますが,日本の場合の人工林は計画的に手を加えていかなければなりません.
北海道ではかつてたくさんのカラ松が植林されました.成長が早いことが主な理由だったようです.そして当時は北海道各地に炭坑がたくさんあったので,そこでの坑道を支えるための資材としても需要が見込まれていたからです.しかしその後エネルギー資源の変遷により炭坑は無くなってしまいます.また,カラ松は割れやねじれといったくせの多い材種です.そのためこれまではあまり建築資材としては使われることがありませんでした.でもこれからは大きく成長した材が出てくること,乾燥技術の向上などでくるいの少ない材が供給できること,輸入していた木材が中国など経済成長の高い国に流れて入りにくくなっていることなどから,地場産カラ松の利用が注目を集めています.
問題は地場産の木材が輸入材に比べまだ価格的に高いことです.だれでも住まいをできるだけ安く作りたいと思うのは当然で,こうした価格面での問題を克服していかなければ,本当に普及させることは難しいと考えています.

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