木造住宅の耐震強度(その2)
ここでは在来工法の木造住宅を前提に話を進めます.
木造住宅で構造強度を検討するとき,その建物にはたらく力には大きく分けて鉛直方向の力(荷重)と水平方向の力(外力)があげられます.(このほかにも土圧や水圧などもありますが,今回は木造の架構に関連することだけに限定します.)この内,地震による力は主に横方向の力で,後者の外力の一種ですが,今日は前者の鉛直荷重について述べたいと思います.その意味では耐震強度についてというより,一般的に木造の強度についての話です.
鉛直荷重は地球の重力によって生じるもので,建物自体の自重(固定荷重)と,建物に入ることになる人や家具などの荷重(積載荷重),それに北海道のように雪が降る地域では屋根に積もる雪の重さ(積雪荷重)があります.
これらの重みによって,木造の架構で検討しなければならないのが梁と柱です.梁は重いものが載ると当然たわみますので,重さに応じてそのたわみぐあいが一定範囲に収まるように断面の大きさを検討しなければなりません.重たい荷重がかかる場合や梁のスパン(長さ)が長い場合はそれなりに断面を大きくすることになります.それが不足していると,歩いたときに床が揺れたり,あるいは下にドアなどの建具があった場合,たわんだことによって枠が変形しその建具が開かなくなるという現象が起きます.
柱の場合も,その長さと断面の大きさが問題になります.柱が長くて断面が小さいと図の右のように上からの荷重がかかったときに柱が折れ曲がることが起きます.これを座屈(ざくつ)といいます.座屈が起きないようにするにはより太い柱にする必要がでてきます.
今日は難しい言葉がいっぱい出てきて,読みづらかったかもしれません.
梁についてですが,元々北海道では地元で採れるエゾマツ・トドマツの針葉樹を使ってきました.一般に流通しているものは日本農林規格(JAS)に則っていて,一番長いもので12尺(3.65m),断面も105mmX300mmが最大で,これを超えるものは特注しなければなりません.ですから,そのような梁が必要な場合は軽量鉄骨を使うのが常でした.しかし,から松を使った構造用大断面集成材が普及するようになってからは,鉄骨を使わずにすべて木で架構ができるようになりました.集成材は簡単に言うと小さな木材を接着剤で張り合わせて大きな断面と長さにすることができるものです.これにより,長さや断面の大きさの制限が無くなりました.また,から松はもともとエゾマツなどよりも堅く曲がりにくい性質なので,強度的にも強いものができます.
画像は4間(7.28m)の大梁にから松の集成材を使った例です.北海道は断熱の関係で,壁はどうしても大壁になるので,柱はなかなか見えてきませんが,断面の大きな梁は見えるようにしてできるだけ構造を視覚化するのが私は好きです.