オール電化住宅
寒冷地での住まいづくりでは,暖房方式をどうするかというのはとても重要な要素です.まずは熱源を何にするかということですがかつて灯油が40円/Lくらいだったころは,ランニングコストからいって灯油が第1候補でした.でも灯油価格が現在のように80円/L超とかつての倍以上になってしまうと,オール電化住宅のほうがランニングコストが安くなってきます.そのようなわけで,最近はオール電化住宅にする住宅が増えてきました.
これは蓄熱式暖房機を玄関に設置した例です.蓄熱式暖房機は,セラミックの蓄熱体に深夜電力で熱をため込むという構造上,どうしても機器が大きくて場所をとりがちですが,このように収納と組み合わせることで,その大きさが目立たないようにしました.また,家に入って最初の玄関先が寒いとなんとなく感じが悪いので,できるだけ玄関は暖かくしたいと思っています.
オール電化住宅の暖房というと,かつてはこの深夜電力を利用した蓄熱式暖房機しかありませんでしたが,最近になって融雪電力という契約を使って電気ボイラーで温水を作ってそれで床暖房をしたりパネルヒーターで暖房したりという選択肢も出てきました.さらには同じ融雪電力でオイルパネルヒーターというものもあります.
これはHT邸の暖房をまかなっている電気ボイラーです.灯油のボイラーと違って一台の出力が限られているので,この家では2台のボイラーを使っています.灯油のボイラーと比べて,小さいし,音がしないのが特徴です.ただし融雪電力での暖房は深夜電力による蓄熱式暖房機に比べるとランニングコストがやや高めになります.
去年,月曜塾で住宅の暖房について主にランニングコストについて勉強会をしました.その時,設備設計事務所の会員が作ってくれた資料によると,灯油単価が55円/Lくらいで石油温水暖房とオール電化の蓄熱式暖房が同等になるとのことでした.都市ガスをつかった暖房でさえ,灯油価格が80円/Lで同じになるそうなので,現状のように灯油価格が83円/Lといった状況では,灯油での暖房が一番高いことになってしまいます.この後,灯油の価格はどうなるのでしょうか?北海道では重要な問題です.
もうひとつ,これも月曜塾の勉強会で知ったことですが,エネルギー源別の二酸化炭素の発生量を比較すると,日本の現状では意外なことにガスや灯油を使った暖房よりも電気のほうが多いそうです.これは日本の発電事情がいまだ火力に大きく依存しているからですが,原子力発電の割合が増えると二酸化炭素の発生量は減ってくるそうです.なかなかむずかしい選択です.
暖房の話はまだまだ色々あるので,これからも取り上げたいと思います.