水越武写真展
北海道立釧路芸術館で「大地への想い 水越武写真展」が開かれています.私は16日の日曜日,ご本人が作品について説明してくれる「アーティスト・トーク」にあわせて行って来ました.
水越さんは現在弟子屈町在住ですが,世界中の大自然を撮り続けている写真家です.今回はその代表作200点あまりを一堂に紹介する展覧会で11月15日まで開かれています.(月曜休館)
この写真展の作品には建築はおろか人工のものはいっさい写っていません.あるがままの雄大なあるいは繊細な自然の姿ばかりです.それでもこの私の建築に関するコラムでご紹介したいと思ったのは,人間の営み,特に建築を作るという行為は地球という美しい環境の中でその一部を借りているのだという意識をいつも持っていたいと思うからです.水越さんの作品を見て,荘厳でそしてあまりにも美しい自然の姿にふれて,あらためてその思いを強くしました.
水越さんは現在は私が生まれ育った弟子屈町にお住まいですが,初めてお会いしたのはとても意外な場所でした.パキスタンにあるナンガ・パルバット(標高8125m)の南壁(ルパール壁)側のベースキャンプでした.パキスタンはネパールとは違い,トレッキングの施設が整ってはいません.当時(1989年)ここに行くにも私はガイドとキッチンボーイを雇い,かなり苦労して行きました.ところが到着するとそこには東京農大の遠征隊がキャンプを張っていて,それに同行していたのが水越さんでした.
意外なところで日本人に会って,うれしくなっていろいろ隊の方々とお話しているうちに,水越さんが私の生まれ故郷に現在お住まいだということも知りました.本に飢えていた私に貴重な本を貸していただいたり,夜はテントに招いていただいて,とてもおもしろい話を伺いました.
また,東京農大の方々にはとてもお世話になりました.日本を離れそうとう日時が経っていた私に白いご飯とみそ汁,目刺しや梅干しといった日本食を食べさせていただきました.涙が出るほどうれしかったです.
これがルパール壁です.当時水越さんにお借りして知った本ですが,ヒマラヤの登山史についてはクリス・ボニントン著「ヒマラヤ冒険物語」(岩波書店)がとてもおもしろいです.このルパール壁についても超人メスナーが登った話など,一度読み出したらとまらない面白さです.
辺境の地を旅することがどれだけ体力・気力のいることか,私なりに知っているつもりなので,今なお継続的にそれを続け撮影をされていることにとても尊敬の思いをいだきます.
水越さんの作品については協同組合日本写真家ユニオンのこちらのサイトで多くの作品を見ることができました.