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2007年07月25日

ゴミ焼却施設の見学

建築設計事務所協会釧路支部主催の企画で釧路広域連合清掃工場を見学してきました.
釧路広域連合清掃工場外観
釧路広域連合とは,釧路市・釧路町・鶴居村・白糠町により構成される可燃ゴミの処理のための行政の集まりです.去年完成したこのゴミ焼却施設は「流動床式ガス化溶融炉」という最新式ともいえる設備です.

ゴミの投入口

巨大クレーン
持ち込まれるゴミはゴミ運搬車から投入されます.投入されたゴミは巨大なUFOキャッチャーのようなクレーンで持ち上げられ燃えやすいように細かく粉砕されます.そして2段階に分けて高温で焼却されます.
中央制御室

発電施設
施設全体の制御をしている中央制御室はまるでテレビで見る原子力発電所のようですが,それもそのはず,ここではゴミの焼却熱で発電もしています.巨大な施設ですが,通常たった5人で維持管理しているとのことに驚きました.

ゴミの問題は地球環境を考える上でもとても重要な要素で,日々日常のことなので常に意識させられます.釧路市ではゴミの分別がこまかく分けられています.ひとつ気になるのは分別回収されているプラスチック系のゴミやペットボトルなどが本当にリサイクルされているのかということです.もしそれがうまくいっていないのであれば可燃ゴミと一緒に燃やして発電にまわした方がいいのではないかと思います.そもそもそれらの化石燃料を原料とする包装類を減らし,地場の木材が原料となる紙類を循環させる方向にしたほうがいいかもしれません.

拾ってきた家
ゴミと建築の関係で思い起こされるのはドラマ「北の国から」に登場する富良野の「拾ってきた家」です.廃材を集めて建てられたという家ですが,実際に見てきた率直な感想は,寒冷地の北海道では無理があるかなと思いました.あまり細かいことを指摘するのも野暮かもしれませんが,窓まわりの断熱がまるでないので,冬はたいへんです.そんなことをいっていたらそもそも五郎さんがこれまで住んできた家はどれも冬は寒そうですが・・・.とにもかくにも「北の国から」は大好きなドラマです.

今回見学したゴミ焼却施設は見学者への対応も充実しています.平日の昼間なら見学できますので,お薦めです.

2007年07月11日

下見板

北海道の広大で自然いっぱいの敷地では,外壁を板張りにすることが多くあります.ほとんどの場合,板の端部をすこし重ねて横に張っていく下見板張りです.まちなかで敷地いっぱいに建物を建てる場合は法律上,外壁の防火性能が求められるので,可燃性の木を外壁に使うのは難しい場合があります.(絶対できないわけではありませんが,面倒です.)下見板張りは北海道ではお馴染みの技術で,かつての木造校舎はたいがいそうでしたし,今でも残っている古い住宅にもよく見られます.
古い民家の下見板張り
この技術,起源はヨーロッパで,イギリスの南東部かスウェーデンかどちらかだそうです.それが地球を西回りに大西洋を越えてアメリカ大陸に渡り,さらには開拓民とともにアメリカ大陸を西へ西へと進み,西海岸のカリフォルニアに達します.そして明治政府の招きで北海道開拓の指導のために訪れたアメリカ人と共に太平洋を渡り日本に伝えられたそうです.そうした由来については藤森照信著 日本の近代建築 に詳しくあります.藤森さんの本はどれもそうですが,この本もとてもわかりやすくおもしろいのでお薦めです.

そのようなわけで,北海道にはあの有名な札幌の時計台をはじめ多くの下見板張りの洋風建築が建てられることになりました.先日行った旭川の旧上川倉庫株式会社事務所も時計台同様白い塗装の下見板張りでした.
旧上川倉庫株式会社事務所
この春竣工したTY邸でも下見板張りにしています.厚岸町の道有林からとれたとど松を板材にして使っています.塗装はオリンピック・ステインという着色防腐剤を使っています.着色すると同時に木が腐りにくいように保護する役割があります.最初の画像がそうですが,かつての古い民家ではそのような塗料は無かったので,たいがい板は炭化して灰色になっています.これはこれで趣がありますが.木部の塗装は定期的に塗装し直す必要がありますが,今回のTY邸ではそうした塗り替えの時も足場を組むことなく簡単な脚立足場だけでできるようにといったこともあって1階部分のみ板張りにしました.塗装は張る前に裏も表も一度下塗りし,張ってからもう一度塗ります.下塗りしないと防腐効果が全体に及びませんし,木が乾燥収縮したとき,塗っていない部分が白く出てきてしまいます.
TM邸下見板近景

TM邸下見板遠景
日本人の女性ほど基礎化粧品を使うのは世界でも珍しいという話を聞きました.つまり大和撫子はあくまでも素肌の美しさにこだわるようなのです.一方で西洋の女性は,お化粧というのは素肌がどうであれ塗りたくって隠してしまえばいいという考え方のようです.木についてもこの違いは同じで,日本では節などの欠点が少なく木目の美しいのが好まれる傾向があります.したがって塗装も木目を生かした浸透性のクリアー塗装が好まれます.一方,西洋では赤でも黄色でもお好みの色で表面に皮膜ができ木肌を覆い隠されてしまうペンキ塗りにします.場合によっては模様替えの度に塗り重ねた塗装が幾重にも重なっているようなこともあります.古い家も自分たちの手で塗装し直したりする習慣が根付いているということもあるかと思います.もちろん西洋でも木目を生かした生地仕上げの塗装にすることも多いのですが.

ただし下見板張りする板は,あまりつるつるにカンナをかけるのではなく,ある程度ざらざらしていたほうがいいことがあります.着色防腐剤を塗る際,ざらざらしていた方が塗料の染み込みが多く,その分防腐作用が長持ちするからです.それでなくとも直接日に当たり,多少剃ったり割れたり,あるいは抜ける節もあるでしょう.その素朴なところが下見板張りの良さなのだと思います.