« 2006年09月 | コラム トップ | 2006年11月 »

2006年10月30日

大聖堂

ケルンの大聖堂を見たとき,とにかくその大きさ,高さに驚きました.それもそのはずで,Wikipediaによりますと,ゴシック建築としては世界最大(高さ157m)で,1884年にアメリカでワシントン記念塔(高さ169m)ができるまでは世界一の高さだったそうです.
夜のケルン大聖堂

ライン川とケルン大聖堂
あの高い塔にはエレベーターがあって,それで上まで上がり,階段で下りてきた記憶があります.

とにかくこの大聖堂が世界で一番高いゴシックの教会だとわかったので,その他に高い大聖堂は何かと思い調べてみました.すぐに思いついたのはイタリアのミラノにある大聖堂です.
ミラノ大聖堂
でも,この建物は巨大ではありますが高さは108.5mで,他にも高い建物がありました.私が調べた限りではフランスのストラスブールという街にあるノートルダム大聖堂が高さ142mで,2番目のようでした.でも残念ながら,この建物は見たことがありません.

シュテファン大聖堂
オーストリアの首都・ウィーンにあるシュテファン大聖堂が高さ137mで3番目のようです.

サグラダ・ファミリア
ガウディが設計したスペイン・バルセロナにあるサグラダ・ファミリアは未完ですが,完成している部分の高さは92mだそうです.ただ,中央の塔が完成すると,その高さは178mとなるそうですから,ケルン大聖堂を越えることになりそうです.何年先になるかわかりませんが・・・.

最近,高校での履修もれがニュースになっていますが,私の母校でも履修もれがあったようです.ニュースを見て,現在は世界史が必須科目になっているのを知りましたが,実は私は高校で世界史を習っていません.とはいっても履修もれではなくて,私は理数科だったので理科や数学の授業は多かったのですがその他の国語や社会の科目は少なく,日本史は学びましたが世界史はカリキュラムにありませんでした.ただ,高校を卒業してからやはり世界史は学んでおくべきだと何度も思いました.とくに建築の世界では,歴史と様式といったことにたびたび触れるので世界史の基礎知識がないことでずいぶんとまどいました.自分で本を買ってきて世界史を学びなおそうとまで思った記憶があります.アジアやヨーロッパを旅しながら,ガイドブックで断片的にその国の歴史を知ることにはなりましたが,いかんせん大きな全体像がわかりませんでした.世界史を学んでいたら,もう少し旅も違ったものになっていただろうと思います.受験という目先のことばかりに対応する学校教育というのはやはり間違っているのだと思います.浅く広くバランス良く,一般的な知識を若いときに学ぶのは大切なことのように思います.

建設中の現場で,足場にのったり,はしごに登ったりすることがありますがどんなに高くても3階くらいつまり高さにして10mくらいです.もともと山登りなどをしていたので,高いところは平気です.ヨーロッパの大聖堂はたいがい上に登れて,眼下の街を一望できるようになっています.東京に行ったときなども高いビルに行ってはるか下を眺めるととても気持ちいいのですが,やはりヒューマンなスケールは3階建てくらいかなとも思います.

2006年10月27日

廊下

比較的小さな家をプランニングする際は,できるだけ廊下のような通路空間を作らないようにします.廊下を経て各部屋があると,それぞれの部屋の独立性は高まりますが,家全体の一体感が損なわれます.小さな家の場合は家族が集まる居間を中心に,そこから各部屋に直接出入りできるようにして,一体感と空間の広がりが感じられるようにします.また,限られた面積の中で廊下をなくすことで各部屋がすこしでもゆったりするようにという意味もあります.しかし,廊下は無ければいいというものでもありません.大きな家で部屋数が多くなるとどうしても廊下が必要になってきます.また,機能が全く違う部屋と部屋を移動する際は緩衝地帯というか気分を変える空間として廊下は有効です.職住が一緒の場合など,住まいから仕事をする部屋に移動する際,廊下を経由して気分を変えるとか,居間から廊下という緩衝地帯を経てトイレに行くとか,そうした役割が廊下にはあります.
UT邸廊下
この家ではプランニング上,廊下がけっこう重要になりました.それゆえ印象的な空間にしようと考えました.すり板ガラスの天井の上には屋根のトップライトがあり,昼間には柔らかい光が落ちます.夜も白熱灯の光であたたかい雰囲気になります.

中廊下
廊下の両側に部屋があるいわゆる「中廊下」では昼間でも暗くなりがちですが,この家では途中に2階との吹き抜けを設け,2階からの自然光が落ちるようにして,暗くならないようにしました.また,壁にちょっとくぼんだ飾り棚(ニッチ)を設け,そこに照明を入れることによってアクセントにしています.
この吹き抜けにはもうひとつ意味があって,お母さんのいる台所と2階の子供部屋をつなぐ関係にあります.相互に声が通るような位置に設けてあります.

お宿かげやま 廊下
これはお宿かげやまの廊下ですが,廊下の先は温泉のお風呂です.このような宿にとってお風呂は特別の場所なので,そこにいたる廊下は違う場所に行くんだということを意識できるような意匠にしました.炭坑のようなトンネルをくぐっていく,そんな雰囲気になればと考えました.
もうずいぶん前になりますが,世田谷美術館(内井昭蔵設計)の渡り廊下は印象的でした.廊下の先にやわらかい光が注いでいて,とても感動的でした.もう一度訪ねたい建築です.

2006年10月23日

北の家図鑑

今日は月曜塾の例会日で,先日の南大通周辺での町歩きで他の班が撮影した写真を見ることができたので,その中から画像を載せようと思いました.
でも,その前に釧路の古い建物を知る上でとても参考になる本をご紹介します.涌井義美さんという方が絵と文をかかれた「釧路発 北の家図鑑」です.
北の家図鑑 表紙
明治から昭和の初期にかけて建てられた,主に住宅を中心に釧路の古い建物をイラスト入りで解説した本で,釧路の古建築を知るにはとても参考になる貴重な本です.

その表紙にある家が現存しています.
大町住宅
「北の家図鑑」によると,この家は1887年(明治20年)ころ,近くの海で座礁した帆船の材を再利用して建てたといわれているとあります.舟の材料を使って建てたということもそうですが,120年あまり前に建てられたということにも驚かされます.今も住む人がいて,たえず手入れを怠らないのでこのようにいい状態であるのでしょう.このあたりは何度か大火に見舞われていますが,焼失しなかったのもとても運が良かったといえるかもしれません.
入舟町住宅
入船町のこの住宅もとても保存状態のいい家です.玄関の庇のちょっと優雅で軽やかな感じや,2階のシンメトリーの出窓など,とても端正でおしゃれなデザインです.やはり「北の家図鑑」によると昭和13年から15年ころに建てられたとあります.

「北の家図鑑」は1990年の発行で,大町や米町の街並みを紹介したものを除くと34棟の建物が取り上げられています.発行の時点ですでに6棟が取り壊されていたようですが,今回の町歩きでさらに多くの建物が消滅しているのがわかりました.中には「浪花町十六番倉庫」や,「蔵の会」によって運営されている大町の土蔵のように保存再生運動により今も市民に親しまれている建物もありますが,多くはやがて朽ち果てて解体される運命なのでしょう.ヨーロッパの石造の建物と違い,保存の難しい日本の木造建築ですが,街の歴史の記憶としてなんとか保存維持できないものかと思います.

「北の家図鑑」に興味のある方は発行元である豊文堂書店にお問い合わせいただくと,手にはいるかもしれません.私も数年前,そこで買い求めました.

2006年10月18日

豊潤な神々

インドは宗教と生活がとても密接につながっている国です.ほとんどの人がヒンドゥー教もしくはイスラム教ですが,ほかにもいくつかの宗教があります.画像はインド西部のグジャラート州・アーブ山にあるジャイナ教の寺院のドームを見上げたところです.
アーブ山ジャイナ教寺院ドーム
ジャイナ教は仏教とほぼ同じ頃,つまり紀元前5世紀ころが起源で,特徴のひとつとしてアヒンサー(不殺生)という教義があります.仏教にも同様の教えがありますが,このような生き物を殺してはいけないという考えはインドには今も根強く,多くの人が野菜しか食べない菜食主義(ベジタリアン)です.インドで売っている蚊取り線香はそのようなわけか,あまり効果がありません.

ヴィマラ・ヴァシヒー寺院回廊の天井

豊潤な神々

偶像崇拝を徹底的に禁止しているイスラム教とは対照的に,インドのヒンドゥー寺院では実にさまざまな生き物のかたちをした神様を見ることができます.このジャイナ教の寺院では,実に豊満・豊潤な女神像が随所に見られます.女性を生命の源として尊んでいたのかもしれません.

インドの建築についてさらに知りたい方は神谷武夫とインドの建築をご覧ください.すばらしいサイトです.この神谷武夫さん著書のインド建築案内もインド建築を知る上でもっともいいテキストだと私は思います.

2006年10月15日

街歩き

10月14日の土曜日に月曜塾で橋南西部地区を歩いてきました.
釧路市の橋南西部地区といわれる南大通周辺は,釧路市で最初に栄えた地区です.かつてはこのあたりが商業・金融の中心でした.その後,幣舞橋を渡った川向こうの北大通に街の中心街は移りましたが,今はその北大通も衰退し,郊外の大きな駐車場を持った大型店に人は流れています.
南大通
今の南大通はご覧のようにいたるところが空き地となって駐車場になっていますし,かつて商売をしていた建物も住み手がいない空き家かシャッターを下ろしている状態のところがほとんどです.

月曜塾と橋南西部地区の関わりには長い歴史があります.私自身は過去の活動については直接にはしりませんが,近年は「釧路橋南ゆめこい倶楽部」の団体会員として活動しています.今回はこの地域の古い建物をもう一度調査しようと街歩きをしました.地図を片手に,一軒一軒建物をじっくり見ながら歩きました.普段,車で移動中には気付かないようないろいろなことがわかり,なかなか楽しかったです.午前10時に港町ビール前に集合し,3班に別れて調査しました.お昼にシーサイドホテルに再び集合し,昼食を食べて解散しました.
木造住宅廃屋
私は東よりの幣舞橋に近いエリアを歩きました.今にも崩れ落ちそうなこんな建物も残っています.建築の細部には興味深いデザインが施されています.
港文館と啄木像
釧路川沿いにあるのが港文館と石川啄木の像です.川沿いにはこの時期,さんま漁船が停泊しています.
釧路のもっとも古い歴史を持つこの周辺について,12月の月曜塾展で調査の成果を発表する予定です.

2006年10月11日

お風呂いろいろ

お風呂は当然のことながら裸になって肌が直接,建物と接するところです.ですからその素材にはいろいろ気を使いたい場所です.私は基本的にお風呂は床暖房にすることが多いです.お風呂に入ろうとして足を踏み入れたときに床が冷たいのはどうにも感じが良くありません.
伊豆石の浴槽
これは浴槽に伊豆石を使った例です.伊豆石は薄い緑色の細かい孔のあいた石で,水をかけるとさっとしみこむ柔らかい肌触りの石です.ぜひこの石のお風呂にしたいとのクライアントのご要望で採用しました.ちょっと心配だったのは水がしみ込んだ状態で凍結したら割れないかということでした.ですから,事前にサンプルを取り寄せ,水をかけて冬期間外に置いて試してみました.割れることはありませんでしたが,やはり冬季に使わないときは充分乾燥させた方が無難だと思います.

御影石の浴槽
これは黒い御影石で作った浴槽です.このような石の場合,表面の仕上げに気をつけます.つるつるした磨き仕上げだと浴槽の中などではいいのですが,洗い場などではすべって危険です.ここでも洗い場の床はバーナージェット仕上げというざらざらしたすべりにくいものを使っています.同じ石でも仕上げによってずいぶん色合いが変わって見えます.
タイル貼りのお風呂
これはタイル貼りのお風呂です.やはり床はすべりにくいように小さめのモザイクタイルを使っています.椅子に座って身体を洗うのに,洗い桶を置くところを少し高くしています.シャワーの水洗金具はグローエというドイツのメーカーのもので,とてもきれいなデザインです.
外の見える大きなお風呂
最後は温泉の大きなお風呂です.外が見えるように窓をもうけてありますが,撮影したのが冬なので結露して曇っていますが.
お風呂は一日の疲れをいやすくつろぎの空間なので,すこしぜいたくにつくってみてもいいかもしれません.

2006年10月09日

アルハンブラ宮殿

スペイン南部アンダルシアグラナダという街にあるのがアルハンブラ宮殿です.ロドリーゴ作曲のギター曲「アルハンブラ宮殿の思い出」でも有名です.
アルハンブラ宮殿01

アルハンブラ宮殿02
13-14世紀に建てられたイスラム建築で,中庭(パティオ)のなかに水が取り入れられている涼しげな建築です.イスラム建築の特徴である,幾何学的な模様による装飾はここでも一緒です.ヨーロッパの中ではトルコより西はキリスト教圏ですが,イベリア半島の南部にくるとふたたびイスラム建築が現れます.

かつてアフリカ大陸からゴーア人と呼ばれるイスラム教の人々がイベリア半島南部に進出していてこのような建物を建てたわけですが,その後キリスト教徒によって奪回され(レコンキスタ)スペインはカソリックの国となっています.正直に言って私はそうした世界史に疎いので,自信がないまま書いていますが・・・.とにかく,このあたりは古くはローマ帝国の遺跡もあったりしていろいろな文化が混じり合ってきた場所なのだということはわかります.
グラナダの街

フラメンコ
フラメンコをみても,さまざまな文化が入り交じった複雑さを感じます.遠く離れた国ですが,魅力的なところです.

2006年10月05日

アルテピアッツァ美唄

以前から行ってみたいと思っていたアルテピアッツァ美唄に行ってきました.美唄市出身の世界的彫刻家・安田侃(やすだ かん)氏の彫刻が並ぶ芸術空間です.
アルテピアッツァ美唄01

アルテピアッツァ美唄02

美唄市も釧路市同様,かつては炭坑で栄えた街です.しかし廃坑の後,人口は減少傾向にあります.アルテピアッツァ美唄は,そうした人口減により廃校になった小学校の建物とその敷地を再利用した施設です.今日のセミナーにもあったのですが,子供にとって家の次に多くの時間を過ごす学校は,とても思い入れの強い建築空間です.そんな学校建築はできることなら長く保存利用したいと思います.しかもこのような魅力的な芸術空間として再利用されるということはとても幸せなことだと思います.
アルテピアッツァ美唄 旧体育館内部

アルテピアッツァ美唄 旧校舎内部
鉄骨と木のハイブリット構造でできた円形屋根の体育館は,現在は彫刻が展示されています.かつては子供達のにぎやかな声が響いていた空間でしょうが,今は静謐な空気と共に彫刻が静かな時を刻んでいます.旧校舎は天井が取り払われ,木造の小屋組が表しになっています.1階は現在,幼稚園となっていて,2階部分が展示施設となっています.古い建物だけに,冬は相当寒いだろうなぁと想像しますが,それも懐かしさの一部かもしれません.
アルテピアッツァ美唄 ランドスケープ
建築の空間や風景と一体となった安田侃氏の彫刻にふれ,語彙の乏しい私には適切な表現ができないのですが,気持をリフレッシュすることができました.


2006年10月02日

セミナーのご案内

月曜塾・JIA道東地区・北海道木質構造開発協議会の3団体共催で,下記の通りセミナーを開催します.興味のある方はご連絡ください.参加無料です.

セミナー① 『暮らしづくりによる街並み景観づくり』
日時:平成18年10月5日(木) 18:00~20:00
場所:釧路工業技術センター
講師:北海道立北方建築総合研究所 居住科学都市生活科 科長 松村 博文 氏
内容:豊かな暮らしを具現化する住まいづくりと街並みづくりについて事例などの紹介を通して議論する.

セミナー② 『道内住宅等の室内空気質調査結果について』
日時:平成18年10月12日(木) 18:00~20:00
場所:釧路工業技術センター
講師:北海道立林産試験場 企画指導部主任研究員 石井 誠 氏
内容:「室内空気質の現況」と「VOCの主な発生源とその対策方法」

今回の講師である北総研の松村先生には,今年6月に月曜塾で北総研を見学した際に案内していただき,また意見交換もさせていただきました.今回は,釧路で今注目の駅の再開発にからんで,現在高架駅で再開発が進む旭川の事例などのお話もあるようです.
また,林産試験場の石井先生にも,昨年末HT邸が竣工した際,今回のセミナーの内容でもある空気質の測定をしていただきました.高気密・高断熱,そして24時間機械換気といった現在の寒冷地住宅におけるとても重要な問題についてのセミナーです.

2006年10月01日

久々の上京

久々に東京に行きました.今回は時間が限られていて,考えた末に秋葉原にある照明とインテリアのヤマギワ リビナ館と丸の内にあるコンラン・ショップに行って来ました.
ヤマギワ リビナ館
秋葉原の駅をでると,噂に聞くメイドスタイルの女の子達がチラシを配っていて,ちょっと異様な雰囲気でしたが・・・.

ヤマギワの照明器具はいつも設計で取り入れているので,カタログはよく見ているし,つかったことのある器具もいっぱいあるのですが,ここのショールームに行くのは初めてでした.あらためていろいろな照明を一堂に見ることができて勉強になりました.また,照明器具以外にも家具や家電製品,インテリア小物などデザインの優れたものがいっぱいあって,楽しかったです.輸入物がほとんどで,お値段も決して安くはありませんが,できる範囲で美しいものを使って暮らしたいとあらためて思いました.

東京国際フォーラム
画像は有楽町と東京駅の間にある東京国際フォーラムです.日本ではじめて国際的なコンペにより計画が採用された建築で,ラファエル・ヴィニオリの設計です.敷地は丹下健三が設計した旧・東京都庁舎の跡地です.ふたつの建物の間が画像のようにパブリック・プラザとして解放されています.都市の中で,このような緑があるとほっとします.
東京国際フォーラム内部
東側の木の葉のようなかたちをしたアトリウムの内部です.未来都市を思わせるようなダイナミックな空間ですが,ガラス張りなだけに温熱環境的には厳しいのだろうなぁと思います.