沢木耕太郎は「マラッカの夕陽は大きい・・・」ということを何かの本で知って,マラッカに夕陽を見に行ったと「深夜特急」にあったように思います.そして,私はその「深夜特急」を読んでマラッカに行きました.
実際に体験したマラッカの夕陽は大きいというよりも,自分を取り巻く空気全体が色づくような感じでした.忘れられない体験です.
マレーシアという国は,多様な歴史と民族で成り立つ複雑な国です.もともとその地に住んでいたイスラム教のマレー系の人々に加え,経済や政治では中国系の移民である華僑の人々が影響を持ち,さらにゴムのプランテーションがヨーロッパの列強によって経営されていた頃に労働力として多くのインド系移民が入り,今日に至っています.
画像は14世紀初頭に建設されたマラッカ王国の宮殿を再現した建築で現在はマラッカ王宮博物館になっています.
その後,この地はアジア進出を目指すヨーロッパ各国の前線基地のような意味合いを持ちます.まず,キリスト教を布教したフランシスコ・ザビエルをはじめとするポルトガルがやって来ます.その後,オランダ,イギリスが統治し,第二次大戦期には日本がやって来ます.
画像は1753年にオランダ人によって建造されたキリスト教プロテスタントの教会です.
街を歩いていたとき,インド系と思われる少年が,私を見て無言のまま突然財布の中から紙幣を取り出して見せてくれました.初めて見る紙幣でしたが,確かに日本の記述が所々にありました.訳が分からず,おもちゃのお金かとその時は思いました.その脚で博物館に行くと,先ほどの少年が見せてくれた同じ紙幣が展示してありました.旧日本軍が発行した軍票(お金の一種)でした.私はかつての日本がこののどかな地で,どれだけむごたらしいことをしたのか教えられていませんでした.しかし,それと同時にこの国の人たちは日本人に対し同じアジア人としてとても友好的で親しみを持っていてくれることも知りました.実際に足を運んでみないとわからないことはたくさんあります.
「深夜特急」を読んで世界に旅立った若い人は多くいると思います.実際,私もその一人でした.学生の時この本を読んで,こんな旅がしたいと痛烈に思いました.そのようなわけで,この本は私にとって特別な存在です.
今回,マラッカについて調べたところ,一番詳しく参考になったのがTony's Netでした.作者もアジアの魅力に取りつかれたバックパッカーのようで,嬉しくなりました.